作品情報
『少年と犬』
原作:「少年と犬」馳星周(文春文庫)
監督:瀬々敬久
プロデューサー:平野隆
脚本:林民夫
【出演者】
高橋文哉(中垣和正 役)
西野七瀬(須貝美羽 役)
さくら(多聞-たもん- 役)
木村優来(内村光 役)
宮内ひとみ(内村久子 役)
斉藤工(内村徹 役)
他:伊藤健太郎 伊原六花 柄本明 江口のりこ ・・
2025年3月20日 公開 上映時間2時間8分
震災で離ればなれになった『少年』と1匹の犬、多聞-たもん-、そして多聞が出会う様々な人達の物語です。
あらすじ
2011年、震災後の宮城県仙台、職を失った主人公、和正は犯罪の手伝いをすることで日銭を稼いでいた。仕事の途中、震災で飼い主を失った1匹の犬『多聞』と出会う。多聞は和正と和正の家族にも元気を与える存在となっていった。そんな中、危険な仕事を任された和正は依頼者に裏切られ怪我を負ってしまう。その際に多聞も行方不明となってしまった。
滋賀県に住む女性、美羽は山中で怪我をした多聞に出会う。病院に連れて行き、そのまま多聞を飼うことに。多聞は美羽にとってもかけがえのない存在となる。そんな美羽のもとに多聞を探していた和正が現れ2人は次第に惹かれ合う。
しかし、美羽には償わなければならない罪があった。ずっとこのままではいられない。そして、いつも同じ方角を見ていた多聞には別に会いたい人がいるのだと感じていた2人は多聞を、どこにいるかもわからない大切な人の元へ送り届けることを決意するのだった。
感想
全体を見ると名犬ラッシーのような物語なのですが、私個人としてはストーリー構成と展開が少し残念でした。基本的に『和正と美羽の物語』が1時間以上あり、『多聞と多聞の大事な人である少年の話』が最後のちょっとしかありません。なので、さらっと生い立ちを語られただけの少年に感情移入するのが難しかったです。それなら、ほぼ名犬ラッシーのパクリみたいになってしまいますが、和正が小さい頃に多聞と暮らしていたけど離ればなれになってしまい、数年後に成長した和正のもとに多聞が帰ってくる。というあくまでも物語の主軸は『和正(少年)と多聞(犬)』として、その旅の中で出会う人々の物語を彩りとしていれたほうが、感動しただろうなと思いました。
正直、西の方に行きたそうにしている。ということしか分からないのに、多聞をどうやって特定の人に会わせるのだろうかと思っていたのですが、案の定、和正は現実的には退場という形で、実質多聞だけで少年の元へたどり着きました。和正の退場という急展開には驚きましたが、まあ、やっぱり人間がいたら足手まといになるよな、そーだよな。と思ってしまいました。犬はずっと野宿でもなんとか自力で生きていけますからね。でも、どーにかして『主人公が送り届けた』ということにしたかったから、和正を飲まず食わずでも大丈夫な状態にする。という少し無理があるアイディアで感動が薄れてしまった感は否めませんでした。そして、個人的には多聞の最後はもう少し誰かが側にいてあげて欲しかったなと思いました。
ここまで読んで頂けた方ならもう分かってるかと思いますが、私は泣けませんでした。一緒に見に行った友人は泣いてましたが、登場人物との絆とか共に旅した思い出に涙したのではなく、『犬が死んだ』という事実に涙した感じです。
でも、組み合わせが私の好みではなかっただけで、登場人物個人個人の物語はよかったと思います。痛々しい感情が分かる演技だったと思いますし、周りの人や環境のせいにせず、『自分の決断』でこうなっているんだ。という人間の弱さや愚かさが描かれていたのはいいなと思いました。
美羽が和正と一緒にAKB48のヘビーローテーションを歌うシーンがあるのですが、そこが私の一番好きなシーンでした。背景の青空と美羽の表情で、たとえ一時的だったとしても、いろんな重荷を投げ捨てて、自由だ。と感じているように見えていいシーンだった思います。美羽の表情にフォーカスした時の『君に会えて』という歌詞が、和正と多聞に会えて人生をやり直すことができた美羽にぴったりの歌詞で素敵でした。
あと、多聞役のさくらちゃんは可愛かったし、演技上手でした!以上!

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。